7月7日晴れ。
大切な友人にあってきた。
ほぼ三年ぶりだ。
彼女とは職場の先輩後輩として知り合い、もう20年以上の付きあいになる。
訳あって彼女が退職したあとも時々連絡を交わし、年に数回会ってはそう、この前の丸ちゃんと大倉君のスペースのようにとりたてて中身のない話をし大笑いして別れる、それが彼女とのスタンスだった。
そんな私にとって気のおけない彼女に病がみつかったのは5年程前。
特に深刻な顔を見せずからっとした口調で「この前手術したの」と切り出した。
突然の告白に私はひどく動揺した。
少し前に亡くなった母と同じ病気だったからだ。
黙り込み涙ぐむ私に「そういう顔するから言わなかったんだよ」と朗らかに言って肩をバンバン叩かれた事を今も覚えている。
それからも彼女は変わらなかった。
メールで近況を報告しあい、会った時は美味しかった食べ物やお気にいりの俳優の事を夢中になって話し、そして体を揺らして大いに笑っていた。
コロナ禍で会えない時期もLINE(メールからLINEになった)の内容に深刻さは見られず、近くの図書館がリニューアルして綺麗になったよとか、姪っ子さんが大きな餃子を作って持ってきてくれたとか他愛のないものばかり。
病状についてはごくごく簡単に触れるだけ。
それでも少しずつ進行しているのだろう事はわかった。
そうして先週久しぶりに彼女から連絡がきた。
返信が遅くなった事を詫びる文章の後に
「もし都合が良ければ7日に会いたい」と。
メールやLINEを送るのも、食事に行こうと誘うのもいつも私の方だった。
おおらかで優しい彼女には多くの友人がいて、私はそのうちの1人にすぎないとわかってはいたけれどほんの少し寂しく感じていた。
だから病気の事もすぐに教えてくれなかったし、会っても真面目な話はせず気晴らしにちょうど良いくらいなだろうなとも思っていた。
その人が日付を指定して会いたいと言ってきてくれた事に喜びと不安を覚えつつ、
偶然公休日だったので、「行きます」と返信をした。
そして今日。
数年ぶりに会った彼女は自宅のベッドに横になったまま
「見てよ。ダイエット成功」と言って笑った。
絶対に泣くもんかと奥歯を噛み締めてうんうんと頷いた。声は出せなかった。何か言ったら涙がとまらなくなる。
私の様子などおかまいなしに彼女は喋り続けた。
これまで教えてくれなかった治療の辛さ、うとうとした時に襲ってくる不安、等々。
と、同時に今までと変わりない見ているドラマの話や大好物の寒天をほんの少し食べられた嬉しさも目を見開き楽しそうに喋った。
一瞬、間が空き
「まだ関ジャニ好きなの?」
と唐突に聞かれた。
「好きだよ」
そう答えると
「コタロー良かったよね。横山君すごく良かった。コタロー見てたらあんたが関ジャニ好きなこと思い出して会いたくなったのよ」
にっこり笑って彼女は言った。
あまり長居をしてはいけないと腰をあげ
「またね。」と言って右手をそっと握ると
彼女は黙って手を握り返した。
もう一度「またくるね」
さっきより強く言ったら
微かに
「うん」
と頷いた。
7月7日晴れ。
大切な人にあってきた。