大好きだった人
これは私が初めて好きになった絵師さんへ捧ぐラブレターである。
怒涛の育児期間中、少し息継ぎできるようになった頃突如関ジャニ∞にハマった。
理由は今もって判然としない。
バラェティが面白いとか歌と演奏が熱いとか全員顔がとてもよろしいとか様々なきっかけはあったが、「これだ!」というものはなく敢えて言うならば村上君言うところの「あいつらなんか知らんけどいっつも楽しそうやなぁ」という雰囲気に惹かれたのだと思う。
で、好きになったはいいもののなにせ供給の多いジャニーズアイドルである彼らの膨大な情報をどこでどう仕入れたら良いのか?
手始めにCDとDVD購入。
べらぼうにある。まずは最新作から。
次に雑誌。
今発売中のものからにしよう。
グッズ。
通販は無いの?ライブ会場に行かないと買えないの?写真はジャニーズショップで買えるとの事。通販じゃダメ?
レギュラー番組全録。
当たり前だがこの時点であっさり夫に「関ジャニ好きになったの・・?」とばれる。
ファンクラブに入る。
人生二度目のファンクラブ入会。(一度目は坂本真綾。長い間見守りすぎて心は親戚のおばちゃん)
ライブへ行くには必須らしい。
止まらない。
このままではだめだ。
月々の関ジャニ∞代上限を自らに課す。
そうこうして最後にたどり着いたのがツイッターである。
その頃の私はガラケーだった事もあり、インターネットなるものに触れる機会は皆無でPCも仕事以外では使用しなかった。
けれど彼らを好きになってから、少しでも早く情報を知りたくて恐る恐る「関ジャニ∞」を検索するようになったのだが、そこに広がる「関ジャニ∞」の多さと言ったら!
そこで出会ったのがAさんだった。
年上組が先生、年下組を園児に見立てた彼らのパロディを鉛筆で生き生きと描いていた彼女の作品に一目で心を射抜かれた。
優しくてキレイだけど若干子供達になめられがちな横山先生に亮ちゃんからの愛が重くてお疲れ気味のすばる先生、みんな大好き厳しくもあたたかい信ちゃん先生。
いつもほわほわしていて、大人びているたっちょんに絡まれがちな丸ちゃんと人見知りな亮ちゃんの手をひいて輪の中に入る笑顔のかわいいヤス君。
そんなエイト幼稚園の日常を、大胆な少年漫画風でもあり繊細な少女漫画風でもある独特の筆致で描いていたAさんの作品の虜になり夢中になったのだ。
そのお話しは「関ジャニ∞」関連のまとめのようなページに載っていて、この方の他の作品を読むにはツイッターなるものをすれば良いらしい。
それには自分でアカウントを作る必要がある。
すぐ作った。
で、Aさんを即フォローした。
で、Aさんだけをフォローした。
そこはパラダイスだった。
エイト幼稚園の他に、ぱっち、キャンジャニちゃん、CMのパロデイ、MCやテレビ番組でのエピソードを抜粋したもの、どれもこれもハートに直球どストライク。
あぁなんて素敵なんだろう。
こんなにも愛に溢れ、こんなにも心を満たしてくれる作品を描いてくれる人がいるなんて。
中でも今も忘れられないのがキャンジャニちゃんの丸子と倉子のお話だ。
原作は別の方が書かれていて、それをもとにAさんが漫画化したものだ。
互いに喧嘩しながらも本当は仲良しの丸子と倉子。
ある日倉子が一人で街を歩いていると聞き覚えのある丸子の声がする。
丸子だ!と思い声をかけようとすると丸子の隣には彼氏らしき男の子がいる。
彼と嬉しそうに話す丸子は教室で見る丸子の何倍も可愛らしくて輝いていた。
丸子から彼がいるという話を聞いた事がなかった倉子はいたたまれなくなりその場を後にする。
次の日、いつものように屈託なく話しかける丸子に倉子は普段以上にそっけないし明らかに機嫌が悪い。理由がわからず戸惑う丸子。そこへ安子と錦子が来て「昨日はデート楽しかった?」と話しかける。
その瞬間「私だけ知らなかったんだ!」と言って教室から走って出ていく倉子。
倉子も知ってると思って、と謝る二人に「大丈夫」と笑いかけて後を追う丸子。
屋上へ上がる階段で倉子をつかまえた丸子へ「別に私になんて話す筋合いないわよね」ときつい口調で吐き捨てながらも涙ぐむ倉子。
するとまるで幼子のように「うわーん!!」と泣きながら丸子が倉子に抱き着いて「ごめんね」と謝ってくる。
その勢いに圧倒される倉子に「本当はずっと言おうと思ってたけど、倉子といると楽しくて彼の事話すの忘れてたの」と泣きじゃくりながら言う丸子に「何よ馬鹿じゃないの」と倉子は笑い泣きする。
女子高生の甘く切ない限られた季節を切り取った原作も素晴らしいし、その空気を見事に再現し描いたAさんの力量に涙涙だったことを覚えている。
何年も前のことにも関わらず思い出してまた泣きそう。いや泣いてる。
漫画やイラストと同じ位、ちょっと勝気で切れ味鋭い呟きにも憧れていた。
エイトさん皆を応援していて、中でも村上君のファンだった彼女はよく村上君はこんなに素敵なんだよ!と熱く熱く語っていたなぁ。
行動的で気さくで姉御肌(と私はツイートから推測していた)のAさんは、お手製のポストカードや栞を作成してライブの時会える方には相互さんだけではなく事前に希望した人皆に渡していた。
私もめちゃくちゃ欲しかったし何より一度でいいからAさんにお会いしてみたかった。
でも、勇気を出せなかった。
数十年ぶりの初恋かよと一人ツッコミしながら、楽し気な様子をツイッターで見ているだけだった。
あれ、と思ったのはAさんがアカウントに鍵をつけたのが始まり。
毎日のようにあった呟きが二日に一度、三日に一度、一週間空くことも多くなってきた。
その少し前にプライベートが忙しくなってきた事、また、ファンアートとしてパロディの漫画をツイッターにあげるのが難しくなってきた事を呟いていた。
フォロワーが増え注目もされる機会が増えた分、否定的な声を目にするようになったのだとも思う。
「関ジャニ∞を嫌いになったわけではない」という気持ちは140字からも伝わってきた。でも、日増しに「もうこのアカウントを続けていけない」という思いも流れてきた。
そして、Aさんはいなくなった。
Aさんがいなくなった後も、関ジャニ∞の色々な出来事に触れるたびAさんだったらどんな風に思うかな、どんな漫画を描いてくれたかなと考える。
もしかしたら私の知らない場所でまたツイッターをしているかもしれないし、「Re:LIVE」が売れている事に大喜びしているのかもしれない。
どこかで関ジャニ∞の事を見ているのかもしれない。
たった一度だけ、Aさんの漫画にリプを送った事がある。
先に書いた丸子と倉子の漫画にだ。
「Aさんの描く作品が大好きです」となんのひねりもない一言に
「嬉しいです!ありがとうございます」
と返信してくれたAさん。
あの時、大好きですと伝えられてよかったなと自己満足だけど思っている。