「まだ始まっちゃいねーよ」
題名に挙げた台詞は北野武作品「キッズリターン」ラストのものだ。
印象的なこの言葉は幾ら年月を経ても色褪せることなく、何かが終わった時や何かが終わりそうな時、そして何かが始まる時にあちらこちらでひょっと顔を出す。
私の場合は二年前でも一年前でもなく、今号「Talking Rock!」に掲載されたヤス君のインタビューを読んでいる間に降りてきた。
編集長によるほぼ二年ぶりの取材は丹念にその日々を追う。
満身創痍のGR8EST、感謝と追憶の15祭、5人の「関ジャニ∞」を象徴する47ツアー、忘れられない舞台となった「忘れてもらえないの歌」。
「過去に拘らなくなったからあまり覚えていない」と言いつつも、ヤス君の一つ一つへの思いが丁寧に紡がれ掬いとられ語られている。
どうしても避けられないし多分彼にとっては避ける必要の無いすばる君と亮ちゃん、内君の事に対しても(あくまで文中から感じるものだが)気負いは感じられない。
「あの時もう少しこうしていれば今も皆で同じ道を歩んでいたのかも」という後悔は垣間見えても「でも結果は同じだったのでは」と未練は見られない。
そして誌面上の肝として語られたのが、新曲「Re:LIVE」に関する事だ。
一番の歌詞を彼らが、二番の歌詞をファンであるeigterから募って作ったある種異色なこの作品がシングルになるとは到底思っていなかった。
ツイッターの声にもあったが、新しいアルバム内の一曲、もしくはカップリングに選ばれたら嬉しいなと私も思っていた。
それがまさか新しいシングル曲に選ばれるとは。
音楽面でグループを牽引していた二人が去ったとはいえ、ヤス君を筆頭にヨコさんも村上君も丸ちゃんも大倉君も各々技術を磨き高めている関ジャニ∞が新体制後に発売した「友よ」は、評判も上々、老若男女に好評で新たな層も獲得した。
その次を受けて発表されたのが「Re:LIVE」だった訳だが、少々不安もあった。
eigterである自分はめちゃくちゃに嬉しい。送った言葉そのものが歌詞に選ばれなくても彼らを応援する一人として企画に参加でき、尚且つその歌がシングルで発売されるなんて望外の喜びだ。
でも、内輪ウケと思われないかな・・・
ファンだけが満足する曲になってしまわないかな・・・
色んな人に聞いてほしいけれど先入観を持たれてしまわないかな・・・
結果としてそれらの心配は杞憂に終わった。
そして更に今号のヤス君の言葉で自分の思い違いを恥じた。
内輪ウケなんてとんでもない。
ファンへの思いは大切にしつつ、作品としてより高みに行こうと格闘する様子がそこには書かれていたのだ。
スタッフさんに煙たがられても真っすぐ自分達の「音」に突き進むヤス君の姿に、そしてそのヤス君の思いを総意とするメンバーの姿に冒頭の「キッズリターン」ラストで挫折と絶望を味わった二人の若者が口にしたあの言葉を思い出したのだ。
「俺たちもう終わっちゃったのかなぁ?」
「バカヤローまだ始まっちゃいねーよ」
決して過去をないがしろにせず、「あの日々なくして今はない」と歌う彼らは、変わりはしたが何も終わってはいない。
彼らの思い描く未来はいつも、いつだって始まったばかりなのだ。
最後に、すばる君の時もヤス君の時も毎回語られる「Talking Rock!」恒例?丸ちゃんエピソードは、今回もほっこり且つ愛たっぷりでにっこりする一方、切なくて胸がぐっとなった事を付け加えて終わりとする。